高砂淳二

 人間はもともと海に棲む生物だったと言われる。それがやがて、体の中に体液という海を抱えて陸に上がり、今のような生き物になったというわけだ。

 以前、あるところで僕の海の青だけの写真でパネル展をやった時、会場に来ていた3歳ぐらいの女の子が、僕の淡いブルーだけの水中の写真を見て、「あ、お母さんのお腹の中!」と言ったことがあった。人は、単細胞の時代から今に到るまでの進化の過程を、精子や卵子の状態から毎回辿るのだと言われているけれども、もしそうだとすると羊水の中で海の中に棲んでいた時代を一気に過ごしていることになるのだろう。「お母さんのお腹の中」と言ったのは、僕のブルーの写真を見た瞬間にそのころの記憶がふと蘇り、言葉になって現れたのかもしれない。

 僕はもう長いことダイビングをしているけれども、やはり始まりは真っ青で透明な、海の青を見たのがきっかけだった。今でも海のブルーと、その水に浸かってぷかぷか浮いている時の、何とも言えないやさしさが体を包み込んでくれる感覚がたまらなく好きだ。

 海の中には、限りなく透明に近いものから闇の色の手前まで、あらゆるブルーが存在している。

高砂淳二

高砂淳二

自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。 宇都宮大学在学中にオ−ストラリアを放浪。
ダイビングと写真を始める。 「月刊ダイビングワールド」誌スタッフフォトグラファーを経て89年に独立。
海の中から生き物、風景まで、地球全体をフィールドに、自然全体の繋がりや人とのかかわり合いなどをテーマに
撮影活動を行っている。
「night rainbow −祝福の虹−」「free」「aqua」「life」「アシカが笑うわけ」(小学館)、
「ハワイの50の宝物」(二見書房)、「クジラが見る夢 〜ジャックマイヨールとの海の日々〜」(七賢出版・共著)
ほか著書多数。
高砂淳二公式ウェッブサイト


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